2025.09.07
職人が彩る器と歴史 - ジアンを巡るフランスの旅 vol.7 -
ジアン工場の見学に続き、今回は彩色を担う職人たちの現場、そしてジアン・ミュージアムを訪れました。
ジアンの長い歴史の中で磨かれた今も息づく技術と、職人たちの眼差しをお届けします。
器に彩りを宿す「転写」
ジアンの彩色方法には、大きく分けて「転写」と「絵付け」の2種類があります。 
「転写」とは、あらかじめ柄をプリントした専用フィルムを器に貼り付ける手法。
リズムよく、そして丁寧に貼り合わせていく手さばきは、まさに職人技です。
こうして食卓を華やかに彩る器が生まれていきます。

たとえば「ミルフルール」シリーズも転写によって彩られます。
貼り付けた直後は沈んだ色合いですが、焼成後には鮮やかな色彩に変化し、花々が生き生きと浮かび上がります。
柔らかな表情を生む「絵付け」
ジアンの絵付けは「下絵に色を重ねる手法」と、「器の縁にカラーラインを引く」2種類の表現方法があります。

下絵に色を重ねる手法では、転写で施された線画に沿って丁寧に色をのせていきます。
転写によるシャープな輪郭と、手描きならではのゆらぎが重なり、柔らかくも力強い表情を生み出します。

一方、カラーラインはフィレやオワゾパラディといったシリーズには欠かせないアクセント。
器をのせた台を回転させながら、職人は腕をほとんど動かさずに筆を添えるだけ。
ラインから漂う有機的な美しさは、絵付けの際に生まれる“ゆらぎ”に秘められていました。
技術を今に伝えるミュージアム
工場に隣接するミュージアムには、ジアンがこれまでに博覧会で受賞した数々の作品が展示されています。


なかでも高さ約3メートルの「孔雀の花瓶」は、1889年のパリ万国博覧会に出品され、国内外から高い評価を獲得。
ジアンは国際的に名を広め、現代まで続くブランドへと発展しました。
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ジアンが時代を超えて愛され続ける理由は、伝統的な技術を受け継ぎながら、常に芸術性と表現を磨き続けてきたからこそ。
職人たちの眼差しに宿るものづくりへの誇りを感じながら、ジアンの器が日用品という枠組みを超えた“文化そのもの”であることを改めて実感しました。
●ジアン陶器工房
●ジアン・ミュージアム
工房の見学には予約が必要です。
住所:78 Pl. de la Victoire, 45500 Gien, フランス